解体された貨物船の外板17枚が、造船所跡の床に森のように立ちます。
17枚の鋼板は、2022年に解体された貨物船の外板から切り出しました。高さは2.4mから4.1m、重さは1枚で最大1.8トンあります。鷲尾は船の曲面を直さず、波を受けていた向きのまま、赤煉瓦の工場棟に立てました。
鋼板の表面には、フジツボの跡、塗装の剥がれ、喫水線の変色が残っています。赤煉瓦の壁と鋼板の錆は、似た色のはずなのに、近づくと違いがわかります。煉瓦は乾き、鋼は湿って見える。板と板のあいだは約90cmで、人がすれ違える幅です。
鷲尾は元造船所の溶接工でした。35歳で彫刻に転じ、船の部材だけで作品をつくっています。この場所で船が建造されていた時代を知る来場者から、会期中に「この板は見たことがある」という声が何度も届いたそうです。板の裏にまわると、船名の一部が読めるものがあります。
鋼板の表面を指でなぞることは禁止ですが、風の強い日は板が低く鳴ります。造船所の屋根が抜けた区画では、雨の日に板が濡れて色が濃くなります。晴れた日と雨の日で、一度ずつ訪ねてください。
